本放射線測定メタデータベースRADARC311の活動について

   2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とその後の大津波によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所事故は、福島県を中心とする東日本一帯に広く放射性物質による汚染被害をもたらしました。

   汚染の程度や規模の見当もつかず不安が広がる中で、事故直後から、政府、民間、大学等、多くの団体や個人が積極的に放射線測定に関わり、それを発信することによって、次第に被害の状況が明らかになっていきました。

   この間、放射線や放射性物質に関する膨大な測定データが記録されていきましたが、時間の経過とともにそれらのデータは徐々に失われつつあります。

   しかし、データ自体の重要性は言うにおよばず、さまざまな立場の団体や個人がデータを測定し、それを整理し、社会に発信した状況そのものも、またひとつ貴重な社会的資料であると考えられます。

   このような状況のもと、日本学術会議総合工学委員会 原子力事故対応分科会 原発事故による環境汚染調査に関する検討小委員会、日本物理学会、日本アーカイブズ学会が連携して、福島第一原発事故に関わる放射線・放射能測定データの早急な保全と、後世へのアーカイブ化を目指して「放射線・放射能測定データアーカイブズワー キンググループ」を立ち上げ、放射線・放射能測定データを手元に保有している機関や個人の方々に対して測定データの保全を呼びかけるとともに、そのデータに関わるあらゆる情報(メタデータ)を収集する活動を行ってきました。

   一方、上述小委員会を契機として発足した科研費新学術領域研究「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究(ISET-R)」では、大気、森林、海洋、放射線など異なる分野の研究者が集結し、環境の中での放射性物質の移行・拡散の理解のために、様々な測定が行われデータが蓄積されてきました。

   このRADARC311は、これらの活動で収集された放射線・放射能測定に関するメタデータをデータベース化し、測定データの種類や、測定日時、地点、その他のいろいろな情報から、データの所在を検索できるようにしたものです。メタデータの構築と検索システムは、「超高層大気長期変動の全地球上ネットワーク観測・研究(IUGONET)」を下敷きとし、ISET-Rの支援をうけてメタデータベース検索システムが立ち上がり、テスト運用が行われてきました。

   2017年より宇宙地球環境研究所統合データサイエンスセンター(CIDAS)のプロジェクトのひとつとして位置付けられ、震災後10年となった2021年3月より、内容をアップデートして公開することになりました。今後も継続的に福島第一原発事故に関わる放射線・放射能測定データのメタデータ収集を続けながら、測定データそのもののアーカイブ化を目指した活動を行っていきます。